掘ったさつまいもを甘くする。追熟と保存

掘りたてのさつまいもは、まだ甘くありません。洗わずに半日乾かし、1個ずつ新聞紙に包んで、13〜15度の場所で2週間から1か月寝かせます。そのあいだに、芋の中のでんぷんが糖に変わっていきます。冷蔵庫に入れないこと、濡らさないこと。この2つを守れば、春先まで甘い芋が食べられます。
掘りたての芋は、まだ甘くありません
10月の終わり、畑から掘り上げたばかりの芋をその晩にふかして、「あれ、甘くない」と首をかしげた方は多いはずです。育て方が悪かったわけではありません。掘りたての芋は、どの畑の芋でもそういう味です。
店に並んでいるさつまいもは、産地の貯蔵庫で何週間も寝かせてから出荷されています。焼き芋屋さんの芋が甘いのも、寝かせた芋を使っているからです。
掘ったあとに寝かせて甘くすることを、追熟と呼びます。家庭でも、新聞紙と段ボール箱があればできます。
寝かせると甘くなるわけ
さつまいもの中身は、大部分が水とでんぷんです。でんぷんそのものに甘みはありません。
掘り上げられた芋は、土の中にいたときとちがって、もう葉から養分が届きません。芋は生きているので、蓄えたでんぷんを少しずつ糖に変えながら、冬を越そうとします。寒さに当たると、この動きが進みます。貯蔵のあいだに芋がじわじわ甘くなるのは、このためです。
もう1つ、寝かせるあいだに芋の水分が少しずつ抜けます。同じ糖の量でも、水分が減れば味は濃くなります。ほくほくしていた芋が、寝かせるとねっとりに変わっていくのも、でんぷんが減って糖と水の割合が変わるからです。
甘さが決まる場面は、もう1回あります。火を通すときです。芋の中の酵素が、60〜70度あたりの温度でよく働いて、でんぷんを麦芽糖に変えます。低めの温度でじっくり焼くと甘くなるのは、この温度帯を通る時間が長くなるためです。追熟で下地を作り、焼き方で仕上げる。甘い焼き芋は、この二段がまえでできています。

追熟の期間は、品種でちがいます
| 品種の型 | 寝かせる期間の目安 | 寝かせたあとの変化 |
|---|---|---|
| べにはるか、シルクスイートなど、ねっとり・しっとり系 | 2週間〜1か月。長く置くほど甘くなります | 蜜がにじむほどやわらかく、濃い甘さになります |
| 干し芋にする芋 | 1か月以上 | 粘りが出て、干し上がりが飴色になります |
| あまはづき | 掘ったその日から | 掘りたてで甘い、めずらしい品種です |
| 天ぷら、大学芋に使う芋 | 寝かせずに | ほくほく感は、掘って間もないうちが楽しめます |
べにはるかは、掘ってすぐよりも、寝かせてからが本番の品種です。2週間で甘みがのりはじめ、1か月たつと同じ芋とは思えないほどになります。年を越して1月、2月に食べると、さらにねっとりします。
全部を寝かせる必要はありません。掘った日に何本かを天ぷらにして、残りを箱に入れる。2週間後、1か月後と食べ比べていくと、芋が変わっていくのが舌で分かります。
苗と土のことは、伊勢屋にお聞きください
べにはるかについて掘ってから箱に入れるまでの手順
- 晴れが2〜3日続いたあとの、土が乾いた日に掘ります。濡れた土から掘った芋は、傷みやすくなります
- 掘った芋は洗いません。土がついたまま、畑に並べて半日ほど乾かします
- つるから1個ずつ切り離します。芋の両端は折らずに、つるを少し残して切ると、切り口から傷みにくくなります
- 傷のある芋、折れた芋、スコップが当たった芋を分けます。先に食べる組です
- 手で軽く土を払い、1個ずつ新聞紙で包みます
- 段ボール箱に入れます。詰め込みすぎず、ふたは軽く閉じる程度にして、空気が通るようにします
- 13〜15度の場所に置きます
新聞紙は、芋のまわりの湿り気をほどよく保ち、箱の中の温度の変化をやわらげてくれます。1個傷んでも、隣の芋に移りにくくなります。
もみ殻が手に入る方は、箱にもみ殻を入れて芋を埋める方法もおすすめです。昔から農家がやってきた保存のしかたで、温度も湿り気も安定します。
13〜15度の場所は、家のどこにあるか

さつまいもは、もともと熱帯生まれの作物です。寒さに弱く、10度を下回る日が続くと低温障害を起こします。中が黒ずみ、蒸しても固いままの部分が残り、やがて腐ります。反対に、18度を超える暖かさが続くと、芽が動きだして味が落ちます。
ちょうどよいのが13〜15度。湿度は高めを好みます。秋から冬の家の中で、この温度になる場所を探します。
- 暖房を入れない北側の部屋や廊下
- 階段の下の物入れ
- 玄関の内側。ただし、真冬に冷え込む土間は避けます
- 台所の床下収納。暖房の熱が届かない位置なら向いています
冷蔵庫は5度前後なので、寒すぎます。野菜室も同じです。屋外の物置やベランダも、静岡など暖地であっても12月に入ると10度を下回ります。寒い地域では、箱を毛布や発泡スチロールの箱で囲い、家の中でいちばん温度の変わらない場所に置きます。
迷ったら、箱の中に温度計を1本入れておくと確かです。
産地の貯蔵庫でやっていること
産地では、掘った芋を貯蔵庫に入れる前に、キュアリングという処理をすることがあります。温度30度あまり、湿度90パーセント以上の部屋に、芋を数日置きます。高い温度と湿度のなかで、芋は掘ったときの傷の下にコルクの層を作り、自分で傷をふさぎます。そこから腐れが入らなくなり、長く貯蔵できるようになります。
家庭では同じことはできませんが、考え方は生かせます。掘ったあとに洗わず、半日乾かすのは、皮と傷口を乾かして落ち着かせるためです。傷のある芋を分けて先に食べるのも、同じ理由です。
寝かせた芋を、いちばん甘く食べる焼き方
追熟した芋は、焼き方で甘さがもう一段変わります。
おすすめは、160度のオーブンで60〜90分。芋は洗って水気をふき、アルミホイルで包まずに天板に並べます。低めの温度で時間をかけると、でんぷんが糖に変わる時間が長くなり、皮の内側に蜜がにじんできます。竹串がすっと通り、皮と身のあいだにすき間ができたら焼き上がりです。
電子レンジだけで火を通すと、酵素が働く温度をあっという間に通り過ぎてしまい、せっかく寝かせた芋でも甘みが出きりません。急ぐ日は、レンジで半分ほど温めてから、オーブンやトースターでゆっくり仕上げると、甘さが残ります。
蒸してからつぶせば、砂糖をほとんど足さずに、スイートポテトや芋あんが作れます。
よくある失敗
きれいに洗ってから、しまった
土を落としたくなりますが、水で洗うと皮に細かい傷がつき、濡れたところから腐ります。洗うのは食べる直前です。
冷蔵庫の野菜室に入れた
いちばん多い失敗です。1〜2週間で切り口が黒ずみ、火を通しても甘みが出なくなります。
ポリ袋に入れて口をしばった
芋は呼吸をしています。袋の中に水滴がつき、かびが出ます。包むのは新聞紙、入れるのは段ボール箱か紙袋です。
箱に入れたまま、春まで開けなかった
月に1〜2度は箱を開けて、やわらかくなった芋や、かびの出た芋がないか見ます。1個見つけたら取り出し、まわりの新聞紙を替えます。うまく保存できれば、3月から4月ごろまで食べられます。
甘くなる品種を、甘くなる苗で
寝かせて甘くなるかどうかは、品種の性質によるところが大きいものです。べにはるかのように、貯蔵で糖が増えやすい品種を植えておくと、追熟の楽しみがはっきり味わえます。
伊勢屋肥料農材では、べにはるか、シルクスイート、あまはづき、ふくむらさき、イズミ13号の5品種の苗を扱っています。茎頂培養で育てたウイルスフリーの親株から採り、自社の農園で発送日の朝に切って、その日のうちに送り出す苗です。病気を持ち込まず、芋の形と数がそろいやすいので、貯蔵に回せる、傷のないきれいな芋が多くとれます。
来年は何を植えるか。箱の中の芋を食べ比べながら考えるのも、冬の楽しみです。
よくある質問
さつまいもは、掘ってから何日で甘くなりますか
2週間ほどで甘みがのりはじめ、1か月たつとはっきり変わります。べにはるかのようなねっとり系の品種は、年を越すとさらに甘くなります。
追熟は、天日に干せばいいのですか
日に当てるのは、掘った日の半日だけです。何日も日なたに置くと、芋が温まりすぎ、水分も抜けすぎます。乾かしたあとは、新聞紙に包んで日の当たらない場所で寝かせます。
買ってきたさつまいもも、寝かせると甘くなりますか
店の芋は、すでに貯蔵されたものがほとんどです。秋の早い時期に出回る新芋や、直売所の掘りたての芋なら、同じように2週間ほど寝かせると甘みが増します。
芽が出てきました。食べられますか
食べられます。じゃがいもとちがって、さつまいもの芽に毒はありません。芽に養分を取られて味が落ちていくので、芽を取って早めに食べます。置き場所が暖かすぎる合図でもあります。
切ったら中に黒いところがありました
寒さに当たった低温障害か、傷から入った腐れです。黒い部分は苦みがあるので、大きめに取り除きます。全体がやわらかく、においのある芋は食べずに処分します。
小さな芋や細い芋も、保存できますか
できますが、細い芋は水分が抜けやすく、太い芋より早くしなびます。細いものから先に食べ、太くて傷のない芋を長く置く組に回します。



