いちごの苗の選び方。いい苗はクラウンで分かる

いちごの苗は、葉の大きさより株元を見て選びます。株元の短く太い茎をクラウンと呼び、ここが鉛筆より太く、がっしりしている苗が春にたくさん花を上げます。あとは葉が3〜4枚そろっていること、ポットの底に白い根が見えること。この3つを見れば、売り場で迷う時間はぐっと短くなります。
いい苗は、葉ではなく株元で見分けます
10月の園芸売り場には、いちごの苗がずらりと並びます。つい葉が大きく、背の高い苗に手が伸びますが、見るところは逆です。視線を下げて、葉の付け根を見てください。
葉の柄が集まっている株元に、短くて太い茎があります。王冠の形に似ているので、クラウンと呼ばれます。いちごの葉も花も、すべてこのクラウンの中心にある芽から出てきます。春に咲く花のもとになる花芽も、冬のあいだ、この中に蓄えられています。
クラウンが太い苗は、蓄えられる花芽の数が多い苗です。目安は直径1センチ前後。鉛筆より太ければ合格、と覚えておくと売り場で比べやすくなります。
定規を持って行く必要はありません。同じトレーの苗を3つ4つ並べて見比べれば、太い細いはすぐに分かります。
反対に、葉は大きいのにクラウンが細い苗は、日の当たらない場所で間延びして育ったものです。植えてからの根づきが遅く、冬までに株が太りきりません。
なぜクラウンの太さが春の実の数になるのか
いちごは秋に植えて、翌年の5月ごろに収穫します。植えてから食べるまで半年以上。そのあいだに苗がやっていることは、大きく2つです。
1つは、冬が来る前に根を張ること。もう1つは、秋の涼しさと日の短さを感じて、クラウンの中に花芽を作ることです。
クラウンは、いちごにとって貯蔵庫の役目もしています。夏から秋にかけて葉で作った養分を、でんぷんの形でここにためています。冬に葉が小さく縮んでも春にまた勢いよく動き出せるのは、この貯金があるからです。
貯金の多い苗は、植えたあとの新しい根の出が早く、花芽の数も多くなります。苗の段階でついた差は、冬のあいだに縮まることがほとんどありません。いちごが「苗半作」、苗で出来の半分が決まると言われるのはこのためです。

売り場で見る5つのポイント
クラウンのほかにも、手に取って確かめられるところがあります。上から順に見ていくと、1株あたり10秒ほどで済みます。
| 見るところ | いい苗 | 避けたい苗 |
|---|---|---|
| クラウン | 直径1センチ前後で、ぐらつかない | 細く、指で触れると株が揺れる |
| 葉の枚数 | しっかり開いた葉が3〜4枚 | 1〜2枚しかない、または古い葉ばかり |
| 葉の色と柄 | 濃い緑で厚みがあり、柄が短い | 色が薄い、柄がひょろりと長い |
| 葉の表と裏 | 斑点も白い粉もない | 黒や赤紫の斑点、白い粉、裏に小さな虫 |
| ポットの底 | 穴から白い根が少し見える | 根が見えない、茶色い根がぐるぐる巻いている |
葉の色は、濃すぎるものにも気をつけます
葉が黒っぽいほど濃い緑で、やわらかく大きい苗は、肥料が効きすぎていることがあります。窒素が多いと花芽のできるのが遅れ、春の花が少なくなります。ほどよく締まった、つやのある緑が目安です。
根は白さを見ます
ポットをそっと傾けて、底の穴をのぞきます。白い根が見えていれば、いま伸びている最中の若い根です。茶色い根が底でとぐろを巻いているものは、ポットの中で長く待たされた苗で、植えてからの動き出しが遅れます。
斑点のある葉は、株ごと見送ります
葉に黒い斑点、ランナーの跡や葉の柄にくぼんだ黒いしみがある苗は、炭そ病を持っている心配があります。1株持ち込むと、水やりの水はねで隣の株へ移ります。同じトレーに並んでいた苗も、その日は見送るのがおすすめです。
苗と土のことは、伊勢屋にお聞きください
いちご苗を見るランナーの跡が残っている苗は、植えるときに助かります
株元をよく見ると、細い茎の切れ端が1本、つんと残っている苗があります。親株とつながっていたランナーの跡です。
いちごの花房は、この跡の反対側に伸びる性質があります。跡をプランターの奥に向けて植えれば、実は手前にそろいます。収穫のたびに葉をかき分けなくて済み、実にもよく日が当たります。
ランナーの跡が2〜3センチ残してある苗は、作り手が植える人のことを考えて切っている苗です。跡が見当たらない苗でも育ちますが、選べるなら残っているほうを選ぶと、植え付けで迷いません。
品種は「一季なり」か「四季なり」かを先に決めます
売り場の札には品種の名前が書かれています。名前で迷う前に、2つの型のどちらなのかを確かめます。
| 型 | 実のなる時期 | 向いている方 |
|---|---|---|
| 一季なり | 春の5月〜6月に、まとめてなる | 甘くて大きい実を、旬にたっぷり摘みたい方 |
| 四季なり | 春から秋まで、少しずつなる | 長い期間、花と実を楽しみたい方 |
店で売られているいちごと同じ名前の品種は、ほとんどが一季なりです。静岡生まれの「章姫」や「紅ほっぺ」もこちらに入ります。甘さと粒の大きさを求めるなら、一季なりから始めるのがおすすめです。
四季なりは夏も実をつける分、肥料と水を切らさない世話が続きます。はじめての年は一季なりを3株、慣れてきたら四季なりを1株足す、という順番だと無理がありません。
買ってから植えるまでの手順

いい苗を選んでも、植えるまでの数日で弱らせてしまうことがあります。持ち帰ってからの流れです。
- 持ち帰ったら、袋や箱から出して、日の当たる屋外に置きます
- ポットの土の表面が乾いていたら、株元に水をあげます。葉の上からはかけません
- 外側の枯れた葉、黄色くなった葉があれば、付け根から取り除きます
- 1週間以内に、プランターか畑に植え付けます
- 植えるときは根鉢を崩さず、クラウンが土に埋まらない深さにします
ポットの土は量が少ないので、秋でも晴れた日が続くと1日で乾きます。玄関の中や車の中に置いたままにすると、2〜3日で葉の色があせてきます。
買う日は、入荷の直後がねらい目です
苗は、売り場に並んだ日がいちばん元気です。店の棚は日当たりが足りず、水やりもまとめてになりがちで、1週間、2週間とたつうちに葉の柄が伸び、下葉が黄色くなっていきます。店員さんに入荷の曜日を聞いておき、その日か翌日に行くと、同じ値段でひと回りしっかりした苗が選べます。
通販や予約の苗は、発送の日に合わせて仕上げたものが届きます。届く日が分かっているので、その週末を植え付けに空けておけるのもよいところです。
静岡など暖地では10月が植え付けの適期で、11月中旬までが目安です。寒い地域では、半月ほど早めに考えます。
よくある失敗は、安くなった苗のまとめ買いです
11月の終わりごろ、売り場の隅で値下げされた苗を見かけることがあります。長くポットに置かれた苗は、根が茶色く回り、下葉が落ち、クラウンだけが残ったような姿になっています。
こうした苗も植えれば育ちますが、冬までに根を張る時間が足りず、春の花は少なめです。同じ3株を植えるなら、10月のうちに、勢いのある苗を選ぶほうが収穫は多くなります。
もう1つ多いのが、何年も前の株からランナーで増やし続けた苗です。同じ株から苗を取り続けると、年ごとに葉が小さくなり、実の数も粒も落ちていきます。「昔はもっと大きい実がなったのに」と感じたら、苗を新しくする時期です。
伊勢屋の苗は、クラウンと根を見てから箱に詰めます
伊勢屋肥料農材のいちご苗は、自社農園で親株の管理から育苗まで行っています。育苗に使っているのは、いちご専用の土「苺培土Special」です。鹿沼土を配合した土で、ポットの中に白い根がよく張ります。
発送の前に、1株ずつ葉と根の状態を見ます。基準に届いたものだけを、ポットのまま、根鉢を崩さずにお届けします。売り場で1株ずつ見比べる手間を、こちらで済ませてからお送りする苗です。
品種と価格は、その年の苗の仕上がりに合わせてオンラインショップに掲載しています。
よくある質問
クラウンの太さは、どのくらいあればいい苗ですか
直径1センチ前後が目安です。鉛筆より太く、指で軽く触れてもぐらつかないものを選びます。
花やつぼみがついている苗のほうが得ですか
秋の苗なら、花のついていないものをおすすめします。秋に咲いた花は実にならず、株の力を使うだけなので、ついていたら摘み取ります。春に買う苗は、つぼみや花のついたものを選ぶと、その年のうちに収穫できます。
葉の枚数が多い苗ほどいいのですか
枚数よりも、しっかり開いた若い葉が3〜4枚あるかどうかを見ます。古い葉ばかりが多い苗は、植えたあとに外側から枯れていきます。
ホームセンターの苗と、農園から届く苗はどうちがいますか
品種が同じなら、苗そのものの性質は変わりません。ちがいは、ポットに入ってからの日数と、置かれていた場所です。入荷してすぐの苗を選ぶか、発送の日に合わせて仕上げた苗を取り寄せると、根の若い状態で植えられます。
何株買えば足りますか
幅65センチのプランターに3株が目安です。1株から、ひと春に20〜30粒ほどとれます。ご家族で毎朝少しずつ摘むなら、プランター2つ、6株ほどあると楽しめます。
買った苗の葉が赤くなっています。病気ですか
秋から冬にかけて、外側の古い葉が赤く色づくのは寒さへの反応で、病気ではありません。中心から出ている新しい葉が緑色なら、そのまま育てて大丈夫です。



