For Farmers
生産者の方へ いちごの育苗と培土
いちごのポット育苗を、親株の定植からランナーのポット受け、切り離し、窒素を切る管理、花芽分化の確認、定植まで順に整理しました。育苗培土の選び方、高設栽培用培土、大口の出荷にも対応します。育苗の欠株を減らしたい生産者の方、培土の切り替えをお考えの方はご相談ください。

定植する日の苗は、夏のハウスで決まります
促成栽培のいちごは、9月に植えた苗の出来が、年内の収量と春までの株の持ちを左右します。
花芽のそろった苗を、必要な本数だけ、病気を持ち込まずに定植の日まで持っていくのが、育苗の4か月です。
伊勢屋肥料農材は、いちごの育苗用培土を作り、産地の育苗ハウスに届けてきました。このページでは、ポット育苗の流れと、その土台になる培土の考え方をまとめています。
ポット育苗の流れ
| 時期の目安 | 作業 | 要点 |
|---|---|---|
| 春まで | 親株の定植 | 病気を持たない親株を選びます |
| 4〜6月 | ランナーの発生 | 親株を肥料切れさせず、ランナーの数を確保します |
| 6月下旬〜 | ポット受け | 培土を詰めたポットに子株を固定します |
| 7月上中旬 | 切り離し | 発根を確かめてから親株と切り離します |
| 8月中旬〜 | 窒素を切る管理 | 追肥を終え、株の中の窒素を下げます |
| 9月 | 花芽分化の確認、定植 | 検鏡で確かめ、日を置かずに本圃へ植えます |
時期は品種と地域、作型で前後します。
親株の定植
育苗の出来は、親株を選ぶ段階から始まっています。炭そ病や萎黄病は、症状の出ていない親株からランナーを通じて子株へ移るため、前の年に発病のあった圃場の株は親株に使いません。
感染が疑われるときは、組織培養で増やした苗に親株を更新する方法が確実です。
ランナーの発生
春に気温が上がると、親株の株元から1次ランナーが伸び、その先に2次、3次と子株が続きます。充実した親株であれば、1株から30本前後の子株が取れます。
この時期の親株は肥料と水をよく吸います。肥料切れを起こすとランナーの出が鈍るので、緩効性の肥料か液肥で切らさないように管理します。
ポット受け
6月下旬ごろから、培土を詰めたポットを親株の横に並べ、子株をランナーピンで固定します。根の出はじめた子株を培土に密着させると、数日で発根が始まります。
切り離し
7月上中旬、ポットの中に根が回ったことを確かめてから、親株側のランナーを切ります。親株側のランナーを数センチ残しておくと、定植のときに花房の出る向きを見分ける目印になります。
育苗後半に、窒素を切ります
切り離しから8月中旬までは、置き肥や液肥で苗を太らせます。クラウンが太く、展開葉が3〜4枚にそろった苗が目標です。古い葉と、あとから出るランナーは早めに取り除きます。
8月中旬を過ぎたら追肥を終え、株の中の窒素を徐々に下げていきます。窒素が多く残った苗は、気温が下がっても花芽分化が遅れます。
花芽分化
いちごの花芽分化は、低温、短日、低窒素の3つがそろって進みます。平地のポット育苗では、9月中旬前後が分化の時期にあたります。
夜冷育苗や高冷地育苗は、この温度の条件を先に整える技術です。
分化したかどうかは、苗を数株抜き、生長点を顕微鏡で見る検鏡で確かめます。
定植
定植は、花芽分化を確かめた直後が適期です。分化の前に植えると、本圃の肥料を吸って分化が遅れ、収穫の開始がずれ込みます。
植える深さは、クラウンが埋まらず、根が地表に出ない位置です。花房はランナーの切り跡の反対側に出るので、切り跡を畝の内側に向けて植えると、実が通路側にそろいます。
定植後は、少量のかん水を1日に数回行い、新しい根を本圃の土へ誘います。
育苗期の水管理と炭そ病
胞子は、かん水の水で運ばれます
炭そ病の胞子は、病斑の上にできた粘りのあるかたまりから、水しぶきに乗って広がります。公的な試験では、発病株に頭の上からかん水したとき、1メートルを超える距離まで胞子が飛んだことが報告されています。
葉に落ちた胞子は、濡れた状態が半日ほど続くと組織の中へ入り込みます。夕方のかん水で葉が夜まで濡れている育苗床は、感染の条件がそろいやすくなります。
雨よけと、株元へのかん水
対策の柱は、雨よけの下で育苗すること、頭上かん水をやめて点滴チューブや底面給水に切り替えることの2つです。間隔の細かい点滴チューブは、今あるポット育苗のベンチにも後から入れられます。
発病株は、防除の前に持ち出します
動力噴霧機の圧力でも、胞子は飛び散ります。薬剤を散布する前に、斑点の出た株としおれた株を袋に入れて持ち出しておくと、散布がかえって病気を広げる事態を防げます。
薬剤は、いちごの炭そ病に登録のあるものを、系統を変えながら予防的に使います。
育苗培土に求められる性質
ポットは土の量が少なく、畑よりも乾きやすく、湿りやすい環境です。育苗培土には、次の性質が求められます。
- かん水のあと、余分な水がすぐに抜けること
- 水が抜けたあとも、根のまわりに湿り気が残ること
- 粒がくずれにくく、9月まで通気が保たれること
- 病原菌や雑草の種を含まないこと
- 肥料の効き方が読みやすく、窒素を切る管理の妨げにならないこと
- 根鉢が固まり、抜いたときに崩れないこと
水はけと水もちは、片方を上げると片方が下がる関係にあります。水もちに寄せた培土は曇天が続くとポットの中が乾かず、水はけに寄せた培土は猛暑日の午後にしおれが出ます。
苺培土Specialは、土をふるわずそのまま定植できます
「苺培土Special」は、いちごのポット育苗のために作った培土です。平成9年、生産農家の「もう少し水切れがいい培土を」という声を受け、1年の試行錯誤を経て形になりました。
水もちと水切れの両立
鹿沼土を配合し、粒のあいだを水が抜け、粒の中に水が残る構造にしています。かん水の負担と、多湿による炭そ病のリスクの両方に配慮した設計です。
乾き方が極端に振れないので、かん水の回数と量を決めやすく、作業する人が替わっても苗のばらつきが出にくいのが特徴です。
根張りのよい根鉢
鹿沼土の粒に沿って白い根がよく張り、ポットから抜いたときに根鉢がしっかり固まっています。
土をふるい落とさず、根鉢のまま本圃に植えられるので、定植の作業が早く進み、植え傷みによる活着の遅れも抑えられます。
大口の出荷に対応します
苺培土Specialは、家庭菜園向けの袋から、生産者向けの大口まで出荷しています。
育苗の本数とポットの大きさをうかがえれば、必要な量を計算してお伝えします。ポット受けの時期から逆算して納品の日取りを組みますので、春のうちにご相談いただけると確実です。
容量と価格は、袋入りのものはオンラインショップでご確認いただけます。大口は、数量と納品先をうかがってお見積もりします。
高設栽培用の培土も扱っています
いちごの高設栽培は、腰の高さのベンチで作業でき、収穫と管理の姿勢が楽になる栽培方法です。ベンチの培地は量がかぎられるため、培地の性質が、かん水と施肥の設計に直接ひびきます。
取り扱っている高設栽培用培土は、ココナッツピート、ピートモス、バーク堆肥、くん炭を混合した培土です。
ピートモスは水をよく抱える反面、単体ではベンチの底が過湿になりやすい素材です。繊維の粗いココナッツピートとバーク堆肥で排水と通気を補い、くん炭で酸度をやわらげています。鹿沼土を加えた配合もご用意しています。
培土はサンプルをご覧いただけます。粒の粗さと湿り具合を、手に取って確かめていただけます。ベンチの長さと栽培槽の形をうかがえれば、必要量の目安もお出しします。
肥料、農薬、資材と技術相談を1つの窓口で
本業は、肥料と農薬の販売です。培土だけでなく、親株期の肥料、育苗期の置き肥と液肥、炭そ病とうどんこ病の防除薬剤、育苗ポット、ランナーピン、かん水チューブ、本圃のマルチまで、育苗から収穫までに要る資材をまとめてお届けします。
担当が育苗ハウスにうかがい、苗の様子を見ながら、施肥の設計と防除の組み立てをご提案しています。
「去年は炭そ病で苗が足りなくなった」「花芽分化がそろわなかった」というご相談も、培土、水、肥料、防除を合わせて見直すところからお手伝いします。
よくある質問
定植の時期は、いつごろですか
花芽分化を確かめた直後が適期で、平地のポット育苗では9月中旬前後にあたります。品種、地域、夜冷処理の有無で前後するため、検鏡の結果で決めるのが確実です。
花芽分化が遅れるのは、どんなときですか
9月の気温が高い年と、苗の中に窒素が多く残っているときです。追肥を8月中旬で終え、株の中の窒素を下げておくことが、分化をそろえる基本になります。
苺培土Specialは、高設栽培のベンチにも使えますか
苺培土Specialはポット育苗用の培土です。ベンチには、軽さと排水性を重視した高設栽培用培土をおすすめしています。
親株用の苗も、相談できますか
親株の更新をお考えの方には、いちごの親苗(ウイルスフリー苗を親株として、増殖・栽培した苗)を予約で承ります。品種と本数をお聞かせください。
