株式会社 伊勢屋肥料農材

Story

苺培土Specialができるまで

苺培土Specialが生まれるまでの物語をお読みいただけます。平成9年、いちご農家の「もう少し水切れがいい培土を」というひと言から、水もちと水切れの両立に1年をかけた経緯をつづりました。土を選ぶ前に作り手の考えを知りたい方、いちごの土に迷っている方はご一読ください。

01

「もう少し水切れがいい培土を」

平成9年のことです。

お付き合いのあるいちごの生産農家から、伊勢屋肥料農材にひとつの注文が届きました。

「もう少し水切れがいい培土を」

肥料屋への注文としては、ずいぶん短いものです。どの材料をどれだけ、という指定はありません。

ただ、いちごの苗を育てている人がこの言葉を口にするとき、その後ろに何があるのかは、畑に出入りしている者にはよく分かりました。

02

夏の育苗ハウスで起きていたこと

いちごの苗づくりは、1年でいちばん暑い時期に重なります。

親株から伸びたランナーの子株を、小さなポットで1つずつ受け、秋の定植まで育てる。ハウスの中には、何千、何万というポットが並びます。

ポットに入る土は、片手に収まるほどの量です。真夏の日差しの下では、朝にたっぷり水をやっても、午後には乾いてしまいます。

朝に水をやり、夕方にまた水をやり、昼にも苗がしおれていないかを見に行く。育苗の夏は、水やりに追われる夏です。

それなら、水をよく抱える土にすればいい。そう考えるのが自然です。

ところが、水もちのよい土は、雨や曇りの日が続くと、ポットの中がいつまでも乾きません。湿った土に夏の高温が重なると、いちごでいちばん恐れられている炭そ病の広がりやすい環境ができあがります。

炭そ病は、株元が侵されると、株ごとしおれて枯れる病気です。定植を目の前にして苗が足りなくなれば、その年の収穫が減ります。

水やりの手間は減らしたい。けれど、じめじめした土にはしたくない。短い注文の中身は、この2つでした。

03

水もちと水切れは、同じ土の中でぶつかります

水もちをよくするには、水を抱える細かい材料を増やします。すると粒のあいだのすき間が埋まり、水が抜けにくくなります。

水切れをよくするには、粗い材料を増やします。すると今度は、水が素通りして、昼すぎには乾いてしまいます。

片方を上げれば、片方が下がる。水もちと水切れは、二律背反の関係にあります。

どちらかに寄せた土なら、材料を足し引きすれば作れます。農家が求めていたのは、その両方でした。

04

答えが出るのは、苗を育てたあとです

培土の良し悪しは、混ぜた直後には分かりません。

水をかけたときの抜け方は、その場で確かめられます。けれど、根がどう張るか、真夏の午後にどこまで持ちこたえるか、曇りの日が続いたときにポットの中がどうなるかは、苗を植えて季節を過ごしてみないと見えてきません。

配合を変えては苗を植え、根の張り方を確かめる。その繰り返しで、開発には1年がかかりました。いちごの育苗が年に一度の仕事である以上、土の答え合わせもまた、急ぐことのできない作業でした。

05

鹿沼土という答え

行き着いたのは、鹿沼土を配合することでした。

鹿沼土は、粒そのものが小さな穴をたくさん持っている土です。水をかけると、粒の中に水がしみ込みます。一方で、粒と粒のあいだにはすき間が残り、余分な水はそこを通って下へ抜けていきます。

水は粒の中に、空気は粒のあいだに。1つの土の中で、水もちと水切れの居場所を分けたわけです。

水やりのあと、ポットの底からすぐに水が流れ出る。それでいて、根のまわりには湿り気が残っている。

根は空気のある場所を好んで伸びるので、粒に沿って白い根がよく張ります。秋、ポットから苗を抜くと、根鉢がしっかりと固まっています。

根鉢が崩れなければ、土をふるい落とす手間がいりません。「土をふるわずそのまま定植できます」という苺培土Specialの特長は、水切れを追いかけた先でついてきたものでした。

06

土を買うのは、土を作る時間を買うこと

1年をかけて分かったことが、もう1つあります。土を作るには、時間がかかるということです。

材料を選び、配合を考え、混ぜ合わせる時間に加えて、合っていたかどうかを確かめるために、苗を育てて待つ時間が要ります。

農家がその時間を土に使えば、苗の世話に回す時間が減ります。夏の育苗期に、いちばん足りないのは時間です。

伊勢屋には、「土を買うのは、土を作る時間を買うこと」という考え方があります。

悩む時間も、やり直す1年も、肥料屋が先に引き受けておく。農家には、袋を開けたその日から、苗のことだけを考えてもらう。苺培土Specialは、この考え方をそのまま形にした土です。

07

育苗ハウスから、ベランダのプランターへ

苺培土Specialは、それから今日まで、いちごの育苗ハウスで使われ続けています。

生産農家の苗を育ててきた土は、家庭菜園のいちごにも同じように働きます。根が浅く、乾きにも湿りすぎにも弱いといういちごの性質は、ハウスの中でもベランダのプランターでも変わらないからです。

仕事や家のことで水やりが1日あいてしまう方にも、梅雨どきの長雨が心配な方にも、あの短い注文への答えが役に立ちます。

生産者向けの大口に加えて、家庭菜園で使いやすい袋入りをご用意しています。容量と価格は、オンラインショップでご確認いただけます。

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